その死に方なんだけど…トンネルの中の私らが「寒い」って言った場所、ちょうど中央付近、そこで車が一回転してたんですよ。
タイヤを上に向けて。
ありえないことなんですよ、絶対。
そんなに広くないんですから…。
「それだけなら、まだいいんだけど、稲川さん。
そいつ、車から飛び出していて、胴体と下半身が、真っぷたつに切断されていたんだよ」その時、調べた警官も、なんでそうなっちゃったのか、わからないらしいんですね。
ウワッ! あ、あれは絶対に人間じゃないぞ。
この世のもんじゃない! そいつはしゃがみ込んで、そばにいる奴の顔を見ている。
やがて、何かブツブツ言いながら立ち上がって、次の奴のところに行って、しゃがみ込む。
そして、又立ち上がって移動する。
待てよ、俺、あいつをトイレで見てるから、あいつ俺を捜してんのかなあ…段々、位置がずれてきて、近づいてくるのが判る。
やがて、“ツツーッ ツツーッ”と畳がするような音がする。
隣だ! 隣に来てる! 次は俺なんだ、次は俺なんだ…「小屋ん中、明るいんだぜー。
見たらさぁ、真赤なんだよ。
明るいんだよ。
で、中には誰ーもいないんだよ」「うん」「で、台だけが置いてあってな」「うん」「その上に、柩が置いてあるんだよ」「うん」「で、よーく見ると、柩のなかに、誰かが入ってるんだよ」「うん」「で、誰かなーって思って、よーく見たんだよ。
そしたらな…その柩の中にいた奴は、俺だったんだよ」「ばか、お前、ここにいるじゃないか。
そんなところに、いるわけないじゃないか。
」ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ… こちらへ近づいてくる。
砂利を踏み締める音が、だんだん、だんだん大きくなって来て、女の子らしき子が近づいてくる。
「あ〜ボールかっ」と思って、まわりを捜した。
「おっ、あった。
ウッ!? んッ!?」ザラっとしてる。
「コレ、結構重い…」するとその子がにゅ〜っと手を出して、その子の手にそのボールを乗っけてやったら、重かったんでしょうねぇ、カクっと、前に体が出た。
瞬間、上半身が見えた。
見た瞬間…「ウッ」 肩の上に頭がナイ……でね、「この猫は赤ん坊みたいな声で鳴くのねえ」って、思った。
だんだん、自分に迫ってくる。
「これ、猫じゃないような気がする」 それはね、最初は「ニャー」ってやつが、「ニイヤァー」になり、「イヤー」になって、「ヤー」になった。
でも、赤ん坊だったら、絶対抱いてる人がいるわけですよね。
けれど、周り見ると、そんな人はいない。
そして、確実に声は近付いてくる…。
恐怖大王・稲川淳二。
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